百日咳が増えています:第三報

(2019年5月7日掲載)
百日咳の早期診断・早期治療についての当院の取り組み

当院では5年ほど前から百日咳の早期診断・早期治療の取り組みをしており、今年はATS・2019(アメリカ胸部疾患学会;米国の呼吸器学会)を始め、日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本小児科学会において、当院独自の早期診断法や漢方薬を用いた当院オリジナルの治療法を発表する機会を得られました。
4-5年前には、2年間で63例の百日咳と確定診断(百日咳61例、パラ百日咳2例)を得るのがやっとでしたが、昨年度には半年間で112名が百日咳と確定(百日咳98例、パラ百日咳14例)され、83名が百日咳の疑いと診断されています。早期診断・早期治療により、早ければ1週間以内(最短では2日)、平均でも2週間足らずで咳を止めることが出来るようになり、患者さんからもお褒めの言葉を頂戴することが増えました。

百日咳は保健所への届け出が義務付けられている特殊な疾患と思われているのが現状ですが、当院での認識では、かなり広く蔓延している印象があり、急性気管支炎やマイコプラズマ肺炎のようなcommon disease(良く見かける一般的な疾患)に近い印象を持っています。

症状も肋骨骨折を伴うような激しい咳嗽の患者さんもいれば、殆ど咳嗽がない患者さんもいて個体差がとても大きく、このことが百日咳蔓延の一因になっていると推量しています。加えて、喘息発作の形をとる百日咳もかなりの数に上り、3人に一人は百日咳を契機に初発喘息を発症しているケースがあることも当院の研究で分かってきました。喘息治療は近年かなり進歩しているため、喘息治療で改善を認めない場合には、百日咳の重感染のある可能性も示唆されます。大学病院や地域基幹病院でCT検査、喀痰検査などをしても異常がなく、困り果てて当院に来院され百日咳と診断されるケースも多くなっており、呼吸器内科専門医ですら百日咳を疑うことがまだ少ないのかもしれません。このようなことも、百日咳蔓延の一因と私は考えています。

「百日咳は致死的疾患ではないから重要視しない」と明言される小児科医や呼吸器内科医も多いのですが、0歳児に限っては先進国ですら致死的疾患として恐れられており、イギリスでは妊婦さんに接する全員に百日咳ワクチンが義務付けられているほどです。両親に加え、同胞(兄弟姉妹)から0歳児に移るリスクが大きいことも判明しています。多くの先進国では百日咳ワクチンを6回接種が通常ですが、日本では長期間4回接種のままで、一向に改善する気配がありません。2年前の日本感染症学会のシンポジウムでも提言したのですが、MR2期に併せて5回目の接種を、11歳から12歳のDT(二種混合)を6回目の接種に変更すべきと考えています。

百日咳のせき治療は抗生物質と思っている医療者が未だに多いようですが、実は抗生物質は他者への罹患を防ぐことは出来ますが咳を止めることは出来ません。なぜなら、毒素によって咳が出ているからです。西洋薬の鎮咳剤(せき止め)は眠気、めまい、便秘などの副作用があることから20歳未満の使用は控えるべきと言われており、喘息の治療に用いられる気管支拡張薬や去痰剤も効果がないため、漢方薬が第一選択薬となります。

百日咳は変異の多い細菌であることが知られていて、ワクチン接種をしても最初の2年間は効果を得られても、3年目に効果が減弱してしまうことが海外のデータで判明しています。4年前まで百日咳のせき治療に効果があった漢方薬、現在は殆ど効果がなくなっていて、そのために、3年前から当院では新しい漢方薬を用いて治療をしています。この様なことからも、百日咳が変異を起こしていることが推量され、百日咳のせき治療も決めつけずに年々変化させてゆくべきと私は考えています。

百日咳、なかなか手ごわい相手ですが、ワクチンで予防できるものは予防し、発症してしまった場合には、早期診断・早期治療の二本立てで対処すべきと考えます。早期診断で一番大切なことは、「咳が出たら早めに受診する」、「咳を1週間以上放置しない」ことが肝要です。特に、0歳児がいらっしゃるご家庭では気を付けて頂きたいと思っています。

 

百日咳が増えています:第二報

(2018年3月12日掲載)
2017年11月から百日咳と診断される患者さんが再度急増しています。月に10名から20名程度の頻度で、例年になく多い印象です。
最近3年間では12月から1月、4月から6月に多い印象でしたが、季節性の変動が無くなって通年性に移行している様に感じます。最小年齢は4歳6か月、小学生も多く、患者さんの居住地も三郷市南部から北部まで、都内の方もいらして、個別の発症のようです。
昨年の日本感染症学会のシンポジウムでも提言しましたが、4種混合ワクチンの効果は5歳まで持たないケースが確かにあるようで、追加接種の早期開始が望まれます。特に今年は小学校3.4年生の百日咳患者さんが多く、海外の様にMR2期(5歳から6歳)に合わせた追加接種が効果的だと考えています。
百日咳は、百日咳菌とパラ百日咳菌によって引き起こされる病気ですが、日本では2%程度とされているパラ百日咳菌による百日咳も、一昨年の当院でのデータでは5%、最近の早期診断方法では10%程度認めており、かなり見過ごされている実態が分かってきました。百日咳菌による百日咳はワクチンで予防することが可能ですが、パラ百日咳菌による百日咳は予防方法がなく、今後の流行動向に注意が必要と感じています。
当院では早期診断への取り組みによって、発症1週間程度で診断できる百日咳が増えています。これらの取り組みを、2018年5月31日から6月2日に岡山で開催される予定の第92回日本感染症学会で口演発表することが採択され、「当院における百日咳の早期確定診断への取り組み」を発表します。
余談ですが、今年のインフルエンザは喘息患者さんですら感染後咳嗽が殆どない特徴があったため、インフルエンザ後の咳嗽では溶連菌感染症合併例が多く、なかに数名、百日咳合併の患者さんも見つかっています。
漫然と咳止めだけ内服することは避けたいものです。1週間以上長引く咳、嘔吐を伴うような咳があった場合には、早めの受診をお勧めします。

 

百日咳が増えています

はじめに

小児の百日咳はワクチンによってほぼ沈静化していると考えられていました。一方、ワクチンの効果が減弱した15歳以降の百日咳の増加は以前から指摘されています。
当院は咳が止まらずに遠方からいらっしゃる患者さんも多いのですが、今年も既に15名以上の患者さんが百日咳と診断されています。
ワクチン(4種混合・3種混合)の効果は15歳までは持続すると言われていますが、日本で使用されているワクチンは腫れなどの副作用が少ない分、5年程度で効果が消失する例もあるようで、実際当院でも、最年少の罹患者は5歳のお子様でした。
2016年の第56回日本呼吸器学会総会で発表した百日咳に関する報告内容を以下にお示しします。

対象・方法

対象は平成26年4月から平成27年8月までの期間で当院においてEIA法によりPT-IgG≧100EU/ml、又はペア血清で2倍以上の上昇を認めた28名。

結果

女性/男性=17/11、
年齢別では8歳以上10歳未満;5名、
10歳以上15歳未満;5名、
15歳以上20歳未満;2名、
20歳以上;16名(36歳~71歳)。

おわりに

咳が1週間以上続く場合には早期に医療機関の受診をお勧めします。が、残念なことに施設によっては「カゼ」と判断して漫然と鎮咳剤を出すところも多いので、薬効を認めないときには他院を訪ねてみるのも良いかもしれません。家族内、職場内に咳をしている方が他にもいらっしゃる場合には早期の受診をお勧めします。百日咳は1歳未満のお子様にはいまだに命の脅威となる疾患であり、特に小さなお子様がいらっしゃるご家庭ではご注意頂きたく思っています。