百日咳とは?
- 百日咳は「せき」からは始まりません。
百日咳の初期症状は、のどの痛み、鼻水、鼻づまりから始まり、発症2~3日目から咳が出始めます。約30%の患者さんは38℃以上の発熱を伴います。新型コロナやインフルエンザの検査が陰性で、咳が5日以上続く場合には、百日咳の可能性が高いです。
百日咳の「せき」には2つの特徴があります。1つ目は「スタッカート咳嗽(一度出始めるとしばらく続き、一度止まるとしばらく止まる)」で、時間経過と共に咳の時間が長くなり、2-3か月位続きます。2つ目は「咳嘔吐(咳き込みが続き最後に嘔吐する状態)」で、強い咳き込みによって胸が痛くなったり肋骨骨折を伴うこともあります。 - 百日咳は「抗生物質」を飲んでも治りません。
肺炎であれば抗生物質で咳を止めることが可能です。が、百日咳は抗生物質で百日咳菌を消滅させても咳を止めることはできません。なぜなら体内に残された百日咳毒素で咳が続くからです。抗生物質はあくまで百日咳を家族や他の人に移さないための治療であり、咳を止めることはできません。 - 百日咳は「漢方薬」を使えば1週間以内で治せます
西洋薬で百日咳のせきを止める治療法はありません。海外では百日咳の診断が付いた場合、「抗生物質は出しますが咳に効く薬はなく、3か月経過すれば咳は自然に止まりますから、今後は病院に来る必要はありません。」と放置されます。日本では漢方薬が使えるため、5歳未満では「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」、5歳以上から中学生までなら「竹筎温胆湯(ちくじょうんたんとう)」、高校生から成人の場合には「竹筎温胆湯」と「麦門冬湯」の2剤併用で1週間以内に咳を止めることが可能です。当院での治療法は、アメリカの呼吸器学会(全米胸部疾患学会)、日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本小児科学会などで既に紹介されており、日経メディカルの小職の漢方薬コラム、或いは書籍にも記載されています。
(参考文献)
① 日経メディカル;松田正の「急性疾患にこそ漢方薬を!」
第3回;漢方で百日咳の咳嗽を1週間以内に止める!② 松田正 著;「急性疾患にすぐ効く“特選”漢方薬」、2023年、日経BP社
- 百日咳はワクチン接種が有効な病気ですが、発症を完全に予防することはできません
百日咳ワクチンは生後2か月以上1歳までの赤ちゃんにはとても有効です。しかしながら、ワクチン接種を受けられない生後2か月未満の赤ちゃんにとっては、いまだに死に至る可能性がある怖い病気です。現在世界中で使用されている百日咳ワクチンは、副作用が少ない代わりに予防効果の持続期間が短い欠点があります。最近では、ワクチン接種をしていても、2歳から4歳のお子さんも百日咳に罹患するようになりました。が、決してワクチンが無効と言うわけではなく重症化は防げています。よって5歳以上成人までの方々は百日咳の免疫が既にない状態で常に感染のリスクがあるとお考え下さい。妊婦さんや0歳児のいらっしゃるご家庭では、咳がでたら早めに医療機関を受診して、生後間もない赤ちゃんに移さない様にお気をつけ頂きたいと思います。