(2019年5月7日掲載)
成人の溶連菌感染症が増加していることは、当院による学会報告や論文によってかなり認知されるようになってきました。が、咽頭発赤を呈する症例が30%程度、38度を超える発熱を呈する症例も30%程度であることから、まだまだ診断されずに「カゼ」として放置されている症例が多いと推量しています。
今回は、16歳以上の溶連菌感染症の臨床症状をまとめてみました。有名なCentor score(センタースコア;米国のセンター先生が溶連菌感染症の早期診断に開発したスコア)が、却って溶連菌感染症の診断を見逃していることが良く分かります。成人の溶連菌感染症は、特に初感染の場合、重症化することが多いので、ただの「カゼ」ではない、と感じた場合には、その旨を医療者に伝えて頂くことも重要と考えています。その一方で患者さんの訴えを上手に受け入れてくれる医療者が増えることを願っています。
咽頭痛 | 62.9% |
頭痛 | 43.9% |
鼻汁・くしゃみ | 45.3% |
咳嗽・喀痰(せきや痰) | 58.9% |
関節痛 | 9.3% |
悪寒 | 10.7% |
全身倦怠感(だるさ) | 38.3% |
腹痛 | 17.3% |
悪心・嘔吐 | 13.1% |
下痢 | 17.8% |
15歳以下と比較してみると、16歳以上では咽頭痛、頭痛、関節痛、悪寒、全身倦怠感は有意に頻度が高く、逆に鼻汁・くしゃみは15歳以下で有意に頻度が高くなっていました。不思議なことに、腹痛、悪心・嘔吐、下痢は20%前後の頻度で、年齢による差は認めませんでした。消化器症状を呈する溶連菌感染症は、成人も小児も20%程度の頻度で年齢差を認めないことが分かりました。
以前にも報告しましたが、インフルエンザ抗原陰性でインフルエンザ様の症状がある場合には溶連菌感染症の疑いが高いこと、特に片頭痛様の特徴的な頭痛であることが決め手になると感じています。胃腸炎症状で頭痛を伴う場合にも、かなりの頻度で溶連菌感染症であることが多く、吐いて下痢をしているから胃腸炎と短絡的に考えるのは危険と考えます。詳細な問診聴取と丁寧な診察によってのみ正しい診断に到達できる、と言うのが当院での取り組みです。