成人(大人)における溶血性連鎖球菌感染症(以下、溶連菌と略します)の増加と診断率の低さを各種学会で報告しています。症状が多彩でインフルエンザ或いは急性胃腸炎に酷似することに加え、咽頭発赤や発熱を伴わないケースが多いことがその原因と考えています。
溶連菌は急性上気道炎(かぜ)であり通常咳は出ないと考えられています。しかしながら、3人に一人は溶連菌感染前後に顕著な咳嗽(せき)を訴え、そのまま気管支喘息(以下、喘息と略します)に移行する例を目にすることが多くなり、それらの症例をまとめて、今年の日米の呼吸器学会で発表しました。
2016年に開催された米国の呼吸器学会(ATS;米国胸部疾患学会)と日本呼吸器学会総会で発表した内容を以下にまとめてみました。

対象・方法

対象は平成26年9月から平成27年6月までに当院を受診し、溶連菌迅速検査陽性で喘息の既往がなく溶連菌感染後に咳嗽が残存した238例。平均年齢は40.3±17.2歳(15歳から80歳)、男/女=69/169、発症平均7.7±5.2日(1日から30日)後に、喘息の状態を確認できるモストグラフによる呼吸抵抗値(Rrs)と呼気一酸化窒素濃度(FeNO)を同時測定し、病態を確認しました。

結果

モストグラフでRrsが高い症例は216例(90.8%)にも達し、FeNOが高い症例も108例(45.4%)と、溶連菌後に咳嗽が残っている症例の多くは喘息に似た病態であることが確認できました。さらに驚くことに、238例中65例(27.3%)が喘息の治療を現在も継続しており、溶連菌によって喘息が発症することが証明されました。

さいごに

上気道炎後の喘息発症の多くはウィルスによるものと言われていますが、溶連菌感染後の喘息発症リスクは予想以上に高いことが判明しました。今後も、一家庭医としてそのメカニズムを追究し、喘息発症リスクの低減を目指してゆきたいと思っています。