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葛根湯を感冒初期に投与する意義について
葛根湯は誰もが一度は聞いたことがある漢方薬の名前ではないでしょうか? 葛根湯は感冒初期に投与することでとても効果があります。一方で、感冒の予防には効果がなく、タイミング良く内服して、体調が戻ったら直ぐに内服を中止するのが正しい内服方法です。
葛根湯は頻用されながらもその有用性が統計的に証明されたことがなく、昨年6月の第69回日本東洋医学会で優秀演題に選ばれ、2019年2月25日号の「漢方と最新治療」に掲載された、当院での葛根湯の統計学的有用性についての論文を以下に概要をお知らせします。
感冒症状の初期に葛根湯を内服することで、溶血性連鎖球菌感染症の迅速検査の陽性率が約60%も低下することが、当院でのデータ解析で判明しました。葛根湯が溶血性連鎖球菌の増殖を抑制していることが推量され、葛根湯がワクチンの様に自己免疫能を高めていることが示唆されました。その効果は60歳未満で顕著であることも併せて判明し、小児にもとても効果があることが分かりました。葛根湯はインフルエンザやウィルス性胃腸炎の初期にも効果があり、内服のタイミングがとても重要となります。
一方で、60歳以上の感冒には、東洋医学的な診察所見を経てからの処方決定が良さそうであり、東洋医学に精通した医師を受診することが肝要と思われます。
たかが「カゼ」と思うかもしれませんが、百日咳や肺炎、溶血性連鎖球菌感染症なども、初期は感冒症状から始まります。当院では、2日間葛根湯を内服しても症状の改善が認められない時には、クリニック受診を強くお勧めしています。
私見ですが、医療者から診ると感冒(カゼ)の診断が一番難しいと常に感じていて、他の疾患の見逃しがないように、細心の注意を払って患者さんを拝見するようにしています。
感冒症状が続く場合には、「この程度で病院?」と遠慮されずに医療機関への受診をお勧めします。「たかがカゼ、されどカゼ」。解熱鎮痛剤だけ内服して様子を見るのは避けたいものです。感冒の初期治療には漢方薬がおススメです。が、2日間で効果が認められない時には、医療機関を受診しましょう。