当院にかかりつけの小学校5年生T君が、冬休みの宿題「調べる学習」で提出したレポートを私にプレゼントしてくれました。タイトルは「家にある漢方薬が気になった」です。センスが良いですね。大上段に構えずフワッとしていて私のお気に入りのタイトルです。
その内容は詳細で素晴らしく良くまとまっている上に、最後に参考文献まで記載があり、高校生レベルの研究レポートにとても感銘を受けました。以下、内容をかいつまんでご披露します。
総論として、漢方薬の歴史、遣隋使・遣唐使によって中国から日本に伝えられたこと、西洋医学(蘭方;らんぽう)との違い、漢方薬が生薬(しょうやく;自然界にある植物、動物、鉱物由来)の組み合わせで構成されていること、薬品名の規則性についてなどなど、とても詳細にまとまっていました。その後、各論として家にある漢方薬を一つずつ挙げて、構成生薬、どの様な病態に効果があるのかまで、とても良く調べてあり、本当にすごい!!と感動しました。
以下は、本文そのままをご披露します。漢方薬の特徴、この研究の意図がとても上手に表現されていると思います。
「漢方薬の特ちょう」;漢方薬は、ひとつの薬でもさまざまな症状に使える。それは、病気の背景となっている体のバランスの悪さを良くするのが、漢方医学の基本的な考え方だからである。
「あとがき」;かぜをひいて病院へ行ったとき、漢方薬を処方されたのが調べようと思ったきっかけでした。漢方薬をのんでいるのは、ぼくだけじゃなく、母や祖父も飲んでいました。むずかしい本ばかりで、調べるのはけっこう大変でした。でも知ってみると面白かったです。漢方はたくさんあるので、もっともっと知りたくなりました。

開業医になって15年が過ぎました。ご家族全員を拝見できることはファミリークリニックの醍醐味です。当院では、西洋薬に加えて漢方薬を用いることで、西洋薬では治せない病態も治せることが増えました。「カゼ」はウィルスが原因のことが多いので、西洋薬の抗生物質は全く効果がなく漢方薬の独壇場です。新型コロナウィルス感染症も現状特効薬は数少なく、病初期であれば漢方薬の有用性が当院の治療経験からも判明しつつあります。
2000年の歴史を持つ漢方薬がなぜ効果があるのか、いまだに分からないことも多いのですが、T君に負けないように今後も治療法の進化に精進してゆきたいと思っています。
T君、立派なレポートありがとう。