新型コロナウィルス感染症(以下、新型コロナと略します)や「カゼ」に限らず、溶連菌感染症、百日咳、肺炎、インフルエンザなどにおいても、最初の症状は咽頭痛(のどの痛み)、鼻汁、鼻閉、全身倦怠感(だるさ)、寒気、関節痛などから始まります。
「カゼ」は殆どがウィル性疾患であるため、西洋薬(抗生物質、解熱鎮痛剤など)は全く役に立たず、漢方薬治療がとても有効です。市販のカゼ薬や西洋薬はただ単に5-6時間症状を緩和するだけ、根本的な治療にはなりません。それどころか、発熱は身体が免疫力を高めてウィルスなどの外敵を駆逐するための防御反応なので、解熱することでかえって外敵を勢いづかせ病状が悪化することがあり得ます。
漢方薬は必ずしもすぐに解熱はしない代わりに、より免疫力を高めることで患者さんを元気にしてくれます。熱はあっても身体は楽になり食事も取れるようになります。不必要に解熱させないことは、感染症治療ではとても大切なことです。ただし小児の場合には、グッタリしてしまって水分が取れないと直ぐに脱水に陥ってしまうため、38.5℃以上を目安に解熱剤を使用します。ただ、これは解熱している間に水分を取らせる、或いはぐっすり眠らせてあげる目的のみで投与しているに過ぎません。当院では、お子さんが元気であれば40℃を越えてからの解熱剤投与を勧めています。

新型コロナの発生・流行から1年が過ぎました。当院では、以前から溶連菌感染症や百日咳の早期発見に取り組んでいたため、単なる「カゼ」か他の感染症か、漢方薬を用いた鑑別方法を何種類かのパターンで駆使し診断に役立てています。すなわち、「カゼ」であれば漢方薬投与で2日以内に治すことが出来ますが、効果が乏しい或いは全くない場合には、迅速検査、尿・血液検査、画像診断、PCR検査などを用いて正しい診断に到達できる努力をしてゆきます。症状だけで「カゼ」と決めつけるのはとても怖いと常に感じています。

家庭医にはもう一つ強力な武器があります。それは来院時の患者さんの表情です。いつもと違う辛そうな表情であれば、最初から色々な検査を進めることが可能で、日頃の顔を知っていることのメリットはとても大きいと常に感じています。お母さんがお子さんを連れてくるときに「子供の様子がいつもと違うんです」と言う場合には、やはり大きな病気が潜んでいることが多いのと似ている感覚です。日ごろを知っている人から見た「いつもと違う」は、数値化はできなくても、疾患の早期発見にはとても重要だと思っています。