目次

成人(大人)及び小児の溶血性連鎖球菌感染症(溶連菌)多発について

はじめに

平成25年7月から溶連菌感染症が多発しており、保育園、幼稚園、小・中学校内だけではなく家族・地域に拡散している。成人(大人)も数多く罹患しており、最高齢は91歳。この状況を平成27年4月の第112回日本内科学会総会で報告している(成人における溶血性連鎖球菌感染症のunderdiagnosisについて;p280, vol.104, 日本内科学会雑誌, 2015)。

溶連菌を疑わせる症状

成人(大人)の溶連菌感染症が増えています

成人(大人)の溶連菌感染症が増えています

  • 発熱、咽頭痛、咽頭発赤(のどの赤味)と、医師ですら考えている。
  • しかし実際には・・・
  1. 38度以上の発熱を呈する者は30%程度、それも持続するのではなく一過性(一晩だけなど)のことも多い。
  2. 咽頭発赤を認めるのは、小児では30-40%程度、成人(大人)では10%未満
  3. 成人(大人)の場合、咽頭痛に加え激しい頭痛関節痛倦怠感などインフルエンザに似た症状が主体のことが多く、インフルエンザ検査陰性ゆえに「カゼ」と診断されるケースが多い
  4. 現状多い症状は、吐き気嘔吐腹痛下痢などの胃腸炎症状。他院で胃腸炎と診断され病状悪化し受診するケースが後を絶たない。
  5. 一見おたふくかぜの様に、頬や首のリンパ腺が腫れることもある
  6. 気管支喘息の患者さんは咳の悪化を認める。成人(大人)では溶連菌がきっかけでそのまま喘息に移行する例もある(いずれもマイコプラズマ肺炎との鑑別が重要)
  7. 溶連菌感染症の発症前に急激に多量の鼻水が出て、一見花粉症の様な初発症状もある
  8. じんましんが初発症状のこともある(しょう紅熱の発疹とは異なる)

溶連菌の拡散を防ぐために

  • 周囲に溶連菌罹患者がいて、潜伏期(1-5日間、平均3日間)内に何らかの症状が出たらその旨を医師に伝え、咽頭発赤がなくても溶連菌迅速検査を実施してもらうこと
  • 家族内に溶連菌感染症の症状がある場合には、家族全員が受診をすること(ピンポン現象を防ぐため)
  • 最も重要なことは溶連菌感染症で処方された抗生剤は7-10日間最後まできちんと内服すること(5日間では足りません)