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頭痛は鎮痛剤ではなく漢方薬で治そう

はじめに

当院では100種類以上の漢方薬を使用して、様々な疾患の治療をしています。
その中で頭痛は多くの患者さんを悩ませ、重症の頭痛の場合には医者をも悩ます、ありふれていながら厄介な病気です。
漢方薬は長期間飲まなければ効かないと誤解されている方が多いのですが、当院では急性頭痛にも漢方薬を頻用し、多くは10分以内、時には5分以内に頭痛が完全に消失するほど著効する例もあります。
この漢方薬の特性を利用した当院での取り組みを、2016年9月にスコットランドで開催される第5回ヨーロッパ頭痛・片頭痛・国際学会(EHMTIC)で発表することになりました。
以下に概略をお示しします。

対象・方法

急性の頭痛を訴え平成27年1月5日より同年10月31日までに当院を外来受診した患者さんの内、巣症状、髄膜刺激症状、頻回な嘔吐、38度以上の発熱を伴う症例は除外し、残った101例を対象としました。対象年齢7歳から74歳、女性/男性=78/23、対象者全員に漢方薬を経口的に投与し、内服10分後の頭痛の程度、NRS(numerical rating scale;一番痛い時を10として、痛み無しを0としたスコア)、を聴取しました。

結果

漢方薬治療によって85例(84.2%)に頭痛軽減の効果を認めました。
NRS 0-3/10;40例(40/85;47.1%)
NRS 4-5/10;33例(33/85;38.8%)
NRS 6-8/10;12例(12/85;14.1%)
NRS 6-8/10の12例には初回投与から15分後に同量の漢方薬を再投与したところ、全例でNRSは2/10以下となりました。
一方、無効例(n=16)には下記疾患が認められました。
椎骨動脈解離(脳の血管が裂けている状態)、脳腫瘍(鞍上部腫瘍)、頸椎椎間板ヘルニア、副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)、無菌性髄膜炎など。

おわりに

急性頭痛に対しての漢方治療は85%に迫る有効性を認めました。反応が乏しい場合には追加投与も有効であり、2回の投与にも反応を認めない場合には、頭部MRI&MRA検査、時には脳神経外科での髄液検査も必要です。頭痛には解熱鎮痛薬と言う方が多いと思いますが、片頭痛には効果がない上に薬物乱用性頭痛へのリスクもあり、当院では頭痛こそ漢方薬治療で、とお勧めしています。