当院での百日咳早期診断・早期治療の取り組みによって、この一年間で400名を超える患者さんを早期診断し早期治療に導いています。年々百日咳は増加していますが、この一年間で急増しており、急性気管支炎やマイコプラズマ肺炎のようなcommon disease(一般的に良く見掛ける疾患)に近い印象を私は持っています。
その一方で、まだまだこの流行に危機感を抱く医療従事者は呼吸器内科や小児科医ですら数少なく、「かぜ」と言われ続けて漫然と治療を受けている症例が後を絶ちません。
この一年間で、生後1か月、生後4か月の2名の新生児が百日咳に罹患し重症化し入院しました。一例はご両親から、もう一例はご兄弟からの罹患であり、明らかに0歳児の百日咳罹患リスクは大きくなっていると危機感を強く感じます。
加えて、4種混合ワクチンを4回接種しているにもかかわらず、3歳6か月で百日咳に罹患した症例もあり、この2年間で15歳以下の150名(10歳未満が75名、10歳~15歳が75名)が百日咳と確定診断を得ています。成人の百日咳が多いのは先進国でも似た状況ですが、幼児期・学童期に百日咳が多発しているのは、予防接種回数の不備が関係していることが示唆され、海外同様に幼稚園年長時に5回目の追加接種、11歳から12歳の二種混合から百日咳を含む三種混合ワクチンへの変更が急務と考えています。
来年4月に開催される日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本小児科学会への抄録をまとめたばかりですが、上記の危機感から、速報で当院における百日咳の現況を第5報でご報告したいと思います。