2020年10月から4歳の百日咳罹患者が急増しています。そのお子さんを起点にご兄弟やご両親に移って、ご家族全員が罹患したケースも散見します。一番問題なのは、ご家族内に0歳児がいらっしゃるケースで、ほぼ確実に移るので注意が必要です。
当院では百日咳抗体IgM、百日咳抗体IgAを用いた早期診断法(第7報、第9報、第10報を参照)を用いているため、発症後早ければ3日、遅くとも1週間以内に確定診断を下すことが可能です。
咳を止めるためには、竹筎温胆湯を中心とした漢方薬治療が必須(第11報を参照)ですが、他者に移さないためには、如何に早く抗生物質(アジスロマイシン)を投与するかがとても重要です。
一人の百日咳患者を見つけた場合、周囲に3人は移された人がいる、と言われています。
当院では、百日咳患者さんを見つけた場合には、2週間以内に周囲で、咽頭痛、鼻汁、鼻閉、咳をした人が出たら直ぐに受診するように説明しています。
百日咳の潜伏期間は最長3週間ありますが、家族内感染の場合、殆どが1週間から10日以内に症状が発現します。最初は咽頭痛、鼻汁、鼻閉から始まり、2-3日目で咳が出始めます(カタル期がなく最初から咳がでるケースも半分以上認めます)。
咳が出る前であれば抗生物質投与のみで完治させることが可能ですが、咳が出始めてしまうと抗生物質だけでは治すことが不可能で、抗生剤物質と漢方薬の同時投与が必須となります。
発症後1週間以内の早期診断であれば漢方薬の投与期間は1週間以内で済みます。が、治療開始が遅れ発症後1週間を超えてしまうと、完全に咳が止まるまで最低でも2週間を要します。このことが早期診断、早期治療が大切な理由となります。
「かぜ」であれば放置しても2-3日で治るものです。加えて、周囲に咳をしている人がいる場合、新型コロナウィルス感染症よりも百日咳の方が圧倒的に頻度の高い疾患です。咳が3日以上続いた場合には、病院受診をお勧めします。