例年4月から6月にかけて、溶血性連鎖球菌感染症(溶連菌感染症)百日咳はともに流行期となります。が、今年の4月と5月は幼稚園や小・中学校が長期休業となることで、溶連菌罹患者はほぼ0になりました。以前から夏休み期間中は、溶連菌罹患者が小児のみならず成人症例でも流行期の3分の1以下となる現象が認められていたため、小児が集わないことが小児に加え成人の溶連菌感染のリスクを下げることが推量されていました。つまり、成人の溶連菌感染症は小児から伝播していることが示唆されます。成書には「成人の溶連菌保菌者が小児に移す」との記載がありますが、これは現実とは異なるようです。実際6月以降、学校再開に沿うように、溶連菌感染症は再び増えつつあります。今年は夏休みが短いため、7月、8月にも注意が必要かもしれません。
一方、百日咳は4月、5月、6月とコンスタントに罹患者が来院しています。ただし、圧倒的に成人症例が多く、小児例は例年に比べて少なくなっています。人が集わなくなっても、百日咳は感染力がより強いことが推量され、どちらかと言うと、成人が成人に移している可能性が高いようです。学校が休業中であったために、小児の罹患者は例年に比べ少なくなったのだと推量します。
新型コロナウィルス感染症に限らず、人が集うことで細菌やウィルスは人から人に移ってゆくことを再認識できました。ほとんどの細菌やウィルスは咽頭(のど)から侵入してくるため、発症初期では、麻黄湯、葛根湯、麻黄附子細辛湯などの麻黄剤が有効です。肺炎まで進行すると漢方薬の効果には限界がありますが、ポストコロナの時代、感染初期の漢方薬治療の重要性が増していると私は考えています。新型コロナウィルスは「カゼ」のウィルスです。抗生物質は効果がないために、発症早期の漢方薬治療が根付くことが蔓延を防ぐ一助になると思います。「たかがカゼ、されどカゼ」。当院では今まで通り新型コロナウィルスに対しても、他のウィルス性疾患同様、初期治療として漢方薬投与を継続したいと思っています。