3日以上続く咳は喘息かもしれません。
(ゼーゼー、ヒューヒューだけが気管支喘息ではありません)

(2021年3月31日掲載)

黄砂の影響でしょうか、最近、咳がひどくて来院する方が、小児、成人を問わず増えています。
気管支喘息は「ゼーゼー」「ヒューヒュー」する病気と思っている方が多いようですが、それはとても重症の喘息です。日中の聴診では喘鳴が聴こえないことも多く、喘息の診断は問診が一番大切な情報源となります。実際には、咳が主体の喘息が最も多く、夜間から朝方にかけて咳が悪化する、タバコや線香の煙で咳き込む、お子さんの場合だと、笑ったりはしゃいだりした時に咳き込む、走り終わった後に咳がでる、と言う症状があれば、ほぼ喘息で間違えないでしょう。

当院には、喘息を診断できる器械が2つあります。一つはモストグラフと言う呼吸抵抗値を計測できる装置、もう一つは呼気一酸化窒素濃度を計測できる装置です。これらは喘息の有無や重症度を簡単に計測することができ、治療の効果判定にも利用しています。目で見える指標なので患者さんにも分かりやすいと好評です。

喘息治療の基本はステロイド吸入なのですが、咳が消失すると治ったと勘違いして治療を中断される方が多いのが一番の問題です。吸入治療は最低でも6か月間は継続する必要があり、成人発症喘息(20歳以降に発症した喘息)の場合には、一生治療を続ける必要があります。が、日本でも米国でも、1年後にきちんと治療を継続している患者さんは約13%と言われていて、症状がないと治療を中断してしまうのは人間のさがのようです。

ステロイド剤の内服は全身に薬が巡って副作用が出てしまうことがありますが、ステロイドの吸入薬は肺の中にしか作用しないため、全身的な副作用はありませんし、妊婦さんでも安全に実施できる治療です。なので、ステロイドを必要以上に恐れたりせずに、咳がなくても治療を継続して頂きたいと思います。

喘息治療を辛抱強く2年間以上継続すると、感冒や台風、黄砂などのかく乱因子にも動じない体質に改善されて、喘息発作のない快適な生活が送れるようになります。「石の上にも三年」と言いますが、まず2年間は治療を継続してみてください、全く違う景色が見られますよ、とお話しています。

呼吸器科医仲間とよく話すのですが、高血圧治療を自己判断で中止する患者さんはあまり居ないのに、喘息の治療を中断する患者さんが多いのはなぜだろう、といつも議論になります。高血圧は脳出血や脳梗塞、心筋梗塞のリスクになると言うのが十分に患者さんに認識されているからではないかと推量しています。喘息も年間1500人が発作による窒息で亡くなっていますが、何百万人いる患者さんからするとごく一部なので、実感が湧かないのかもしれません。喘息発作で亡くなる患者さんは、比較的発作の回数が少なく、一度発作が出ると一気に悪化するタイプが危ないとされています。発作の回数が少ないから軽症とは言えないのが喘息の怖いところです。

お子さんの喘息はアレルギーが元で起こることが多いのですが、大人の喘息は感染症を契機に発症することが多いです。特に溶血性連鎖球菌感染症、百日咳が多く、マイコプラズマ肺炎やインフルエンザの後に喘息発症することも多いです。かぜの後の咳だからいつか治るだろう、と放置はせず、3日間咳が続いたら医療機関受診をお勧めします。